「メカトロ保守」から「メカトロ・IT保守」への変革を目指して
畠山:
ローレルバンクマシン株式会社は、紙幣や硬貨を数え識別する通貨処理機のトータルソリューションメーカーです。通貨処理機のハードウェアやソフトウェア、金融オンライン端末機について企画・開発から製造・販売・保守サービスまで一気通貫で手掛けております。営業と保守が両輪となってサービスを提供しており、その拠点は全国約90ヶ所におよび、金融機関や官公庁をはじめ、流通、警備、医療、鉄道、娯楽レジャーなど、さまざまな業界のお客様に利用いただいています。
小内:
iパスを導入したのは2018年のことです。それまでの当社のソリューションは機械工学(メカニクス)や電気工学(エレクトロニクス)を中心としたメカトロニクス製品が主体でしたが、2018年ごろから日本でキャッシュレス化が進み始め、今後はIT関連商材がスタンダード化していくことが見込まれました。しかし、保守を担当するカスタマーエンジニア(以下、CE)はデジタル知識が十分ではなく、IT関連商材と聞くと尻込みするような状況でした。そこで「メカトロ保守」から「メカトロ・IT保守」への転換を中期経営計画に掲げ、施策の一環としてiパスを活用することにしたのです。
数ある試験や資格の中でiパスを選んだ理由は2つあります。ひとつは、IT知識だけでなく、企業活動や経営戦略、マーケティング、プロジェクトマネジメントといった幅広い知識を身につけられる点。もうひとつは、経済産業省が行う国家試験である点です。信頼性が高く、当社の顧客にも多く活用されており、顧客と共通ワードでコミュニケーションできることが魅力でした。
CEと営業職の約650名が受験し、合格率約70%を達成
小内:
iパスの受験対象者は約500名の全CEです。これほどの規模の社外試験の挑戦は前例がなく、現場の理解を得ることが重要と考えました。そこでまずCEを後方で支える面々、すなわちサポート部門の部門長や私を含めた現場の管理職、コールセンター担当者など約50名が先陣を切ってiパスを受験し、段階的に合格していきました。
その実績をもとに、2019年4月から拠点責任者が集まる9ヶ所の支店会議に出向き、中期経営計画の施策に紐付いた目標であることを説明しました。現場からは「既存業務で手いっぱいだ」「試験勉強に意味があるのか」といった意見が寄せられましたが、すでに合格した私たちが「iパスの勉強はためになる」「これからのサポートサービスにIT知識は欠かせない」「本部も取り組んでいる。みんなでがんばろう」と訴えたことで相互理解が深まり、全CEで挑戦する雰囲気が醸成されていったのです。
この機運をしぼませないよう、四半期ごとに支店別の受験者数・合格者数の情報を開示したほか、社内報で合格体験談を掲載したり、学びの場の提供や学習ツールの紹介など各支店の工夫を全国会議で発表したりもしました。50代後半のベテランCEが次々と合格した拠点もあり、旗振り役の貢献も大きかったですね。
畠山:
2022年度からはiパスを自己啓発支援制度の推奨試験と位置づけ、受験対象を営業職にも拡大しています。iパスのテキストには、ビジネスパーソンならば知っていて当然という情報が豊富に盛り込まれていますし、AIやビッグデータ、IoTなどの新技術を効率的に活用するための幅広いITリテラシーも網羅しています。営業部門にとってのiパスは、「ビジネスパーソンとしての基礎力向上ツール」といえるでしょう。
営業職への普及の方法は、CEに対する取り組みと同様で、まず本部メンバーを中心に200名が受験し、順次拠点へ展開するというものです。営業職とCEは連携して活動しており、営業職はCEのiパス受験の様子をかたわらで見ていたので浸透が早く、受験はおおむね順調に進んでいます。
また、2022年度からはCEとして採用された新入社員および中途採用社員にもiパス受験を推奨しています。会社からのサポートとしては、受験手数料1回分と受験用テキスト代を全額補助しているほか、休日受験の場合には時間外手当を支給。こうした取り組みの結果、2024年10月時点でCEと営業職の約650名が受験し、約70%という高い合格率を達成できています。
IT系商材のスムーズな納品により、顧客から高い評価を獲得
小内:
合格したCEからは「なるほどと思えることが多く、受験してよかった」「ITに関する用語や知識に関心を持てるようになった」「社内で共通ワードの会話が増えた」などの声が寄せられ、ITへの抵抗感はかなり薄れてきたと実感しています。現に、パソコンと連動する番号札発券機などのIT系商材の保守を率先して担当するCEも出てきました。知識もモチベーションも上がったことでIT系商材のキッティングからセットアップまでスムーズな納品が可能となり、結果的にお客様から高く評価されて社長賞を獲得したCEもいます。
メンテナンスに対する目線も高くなり、従来の「機械を止めない」「迅速な修理」という姿勢にとどまらず、「エラーを未然に防ぐ」という観点で「トラブルの兆候をリモートでつかむにはどうすればよいか」といった議論が現場で交わされています。DX推進に弾みがつくことで、CS(顧客満足)向上やブランディングにも寄与するのではないでしょうか。
営業職からも「システム開発の基本的な考えが習得でき、お客様との商談で活かすことができた」「システム商材のプレゼン資料作成に非常に役に立った」などのコメントがあり、顧客ニーズの把握スキルや提案力が底上げされている様子が見て取れます。
iパスに合格したことをきっかけに、より高度な試験区分や他のIT系資格に挑戦する社員もおり、IT人財の発掘にもつながっていると感じます。
畠山:
もうひとつ、お客様の業務現場に伺うCEがITやビジネスの知識を磨くことで、お客様の課題やニーズをキャッチしやすくなることも利点といえるでしょう。その気づきを営業や本部と共有することでマーケティングの高度化が実現します。iパスを通じてビジネスやITの知識を高め、社員のスキルレベルの底上げにつなげていきたいですね。
今後は時代の変化や技術の進歩に合わせて、知識のアップデートも求められます。振り返り教育を含め、引き続きiパスを活用していきたいと考えています。
ローレルバンクマシン株式会社
各種通貨処理機・システムおよび金融オンライン端末機の開発・製造・販売・保守まで一気通貫で事業を展開するトータルソリューションメーカー。製品は金融機関や官公庁のほか、流通、警備、医療、鉄道、娯楽レジャーなど、多くの業界の企業・団体に導入されている。サービス拠点は全国約90ヶ所。社員数1,330名(ローレルグループ、2024年3月末)。1946年創業。
※掲載内容は2024年10月取材時のものです。